はじめに
Kubernetesは、コンテナオーケストレーションのデファクトスタンダードとして、多くの企業で採用されています。 しかし、本番環境での運用には多くの課題があり、適切な設計と運用が成功の鍵となります。
この記事では、本番環境でのKubernetes運用において重要なポイントを、実際の経験を基に詳しく解説します。 クラスター設計から監視、セキュリティまで、包括的なベストプラクティスを紹介します。
この記事で学べること
- • 本番環境に適したクラスター設計
- • 効率的なリソース管理とスケーリング
- • 包括的な監視とログ管理
- • セキュリティのベストプラクティス
- • バックアップと災害復旧戦略
クラスター設計
高可用性の確保
本番環境では、単一障害点を排除し、高可用性を確保することが重要です。
マルチゾーン構成
- • 複数のアベイラビリティゾーンに分散
- • ゾーン障害時の自動フェイルオーバー
- • データのレプリケーション戦略
ノード分散
- • ワークロードの適切な分散
- • ノード障害時の自動復旧
- • リソースの効率的な利用
ネットワーク設計
適切なネットワーク設計により、セキュリティとパフォーマンスを両立します。
推奨構成
- • CNIプラグイン: Calico、Weave Net、Cilium
- • ネットワークポリシー: マイクロセグメンテーション
- • ロードバランサー: MetalLB、Cloud Load Balancer
- • Ingress: NGINX Ingress、Traefik
リソース管理
リソース制限とリクエスト
適切なリソース制限を設定することで、ノードの安定性とパフォーマンスを確保します。
設定例
apiVersion: v1
kind: Pod
spec:
containers:
- name: app
image: nginx
resources:
requests:
memory: "256Mi"
cpu: "250m"
limits:
memory: "512Mi"
cpu: "500m"
自動スケーリング
HPA
水平ポッドオートスケーラー
- • CPU使用率ベース
- • メモリ使用率ベース
- • カスタムメトリクス
VPA
垂直ポッドオートスケーラー
- • リクエスト値の自動調整
- • 使用パターンの学習
- • リソース効率の向上
CA
クラスターオートスケーラー
- • ノード数の自動調整
- • コスト最適化
- • クラウドプロバイダー連携
監視とログ
監視スタック
Prometheus
メトリクス収集
Grafana
可視化
AlertManager
アラート管理
Jaeger
分散トレーシング
重要なメトリクス
クラスターメトリクス
- • ノードのCPU/メモリ使用率
- • ポッドの起動時間
- • APIサーバーレスポンス時間
- • etcdのパフォーマンス
アプリケーションメトリクス
- • リクエストレート
- • レスポンス時間
- • エラー率
- • ビジネスメトリクス
セキュリティ
RBACと認証
RBAC設定
- • 最小権限の原則
- • サービスアカウントの適切な使用
- • ロールベースのアクセス制御
- • 定期的な権限の見直し
認証統合
- • OIDC連携
- • LDAP/AD統合
- • 多要素認証
- • セッション管理
ネットワークセキュリティ
ネットワークポリシー
apiVersion: networking.k8s.io/v1
kind: NetworkPolicy
metadata:
name: deny-all
spec:
podSelector: {}
policyTypes:
- Ingress
- Egress
バックアップと復旧
バックアップ戦略
etcdバックアップ
- • 定期的なスナップショット
- • 暗号化された保存
- • 複数リージョンへの複製
アプリケーションデータ
- • 永続ボリュームのバックアップ
- • データベースのバックアップ
- • 設定ファイルのバージョン管理
クラスター設定
- • マニフェストファイルのGit管理
- • Helmチャートのバージョン管理
- • 設定のドリフト検出
災害復旧計画
復旧手順
- 1. バックアップからetcdを復元
- 2. クラスター設定の復元
- 3. アプリケーションデータの復元
- 4. サービスとネットワークの復旧
- 5. 監視とヘルスチェックの確認
Deploy.bz チーム
Kubernetesとクラウドネイティブ技術の専門家チーム。 多くの企業の本番環境でのKubernetes運用を支援し、安定したインフラ構築を実現しています。